学校長より
 
 
令和3年度上中だより第3号

理性と想像力

校 長  監物 幸彦 

5月は長い連休があり、授業日数が18日と少なかったので、4月と同様にあっという間に過ぎ去って行きました。梅雨入りを間近に迎え、桜・花水木・つつじから紫陽花へと移り変わる花々の美しさに目が留まります。昇降口横のわずかな藤の花も目に残っています。うっとうしい梅雨ですが、6月生まれの私にとっては、紫陽花が誕生日の頃に満開になるので、小さいときから毎年の楽しみでした。祝日が唯一ない6月ですが、誕生日という自分だけの特別な日があることにささやかな優越感を感じています。
 さて、生徒の皆さん、少し長いですが以下の文章をぜひ読んでください。
 皆さんは「同調圧力」という言葉を聞いたことがありますか。新型コロナウイルスが蔓延し、非常事態宣言やまん延防止措置が発出され、外出の自粛や三密の回避が叫ばれています。多くの国民が真面目にそれを守り、みんなが我慢の生活を続けています。そんな中で、マスクをしないで街を歩いていると注意する人、いわゆるマスク警察と呼ばれる人が現れました。マスク警察のように、皆と違うことをやる人を許さず、みんな同じ行動をとることを強要することを「同調圧力」といいます。この同調圧力は、諸外国に比べて日本人に一番多く見られると言われています。私は、いじめの原因も、同調圧力にあると思っています。例えば、こんな調査があります。
  次の5つの言葉の中で、みなさんはどの言葉を一番「悪口」だと感じますか。一つを選んでください。
@まじめだね  Aおとなしいね  B天然だね  C個性的だね  Dマイペースだね
 これは、中学生を対象としたLINE株式会社と、静岡大学のアンケート調査です。回答で最も多かったのは、圧倒的に「個性的だね」だったそうです。中学生は、「個性的」を悪口と捉えているのです。学校では、一人ひとりの個性を認め、個性を伸ばすことを大切にしてきています。それなのに、中学生は「個性的」を嫌がっています。どうしてなのでしょうか。
  誰でも、他人に対して自分と同じ雰囲気や考え方を感じたときは、心地よい安心感を持ちます。そして、自然と友だちグループが出来ていきます。友だち関係を深めていく中で、グループの中での仲間外れを恐れて、空気を読みながらみんなが話を合わせていきます。中学生が「個性的」を悪口と捉えているのは、そんな同調圧力の影響が強いからだと言えます。個性的であることを避けて生きていくのは、何とも悲しいことです。いじめや仲間外れは、許しがたい同調圧力なのです。いじめをなくすには、「みんな違ってみんないい 認め合えればさらにいい」という気持ちをもてることが大切なのではないでしょうか。上大久保中の学校目標「温かい学校」を実現するためにも、同調圧力に負けたり、許したりしないでほしいと思います。では、具体的にどうすればよいのでしょう。いじめをなくすための、一つ目のキーワードは「理性」です。
  おさかな博士のさかなくんが著書の中でこんなことを言っています。
 『メジナという魚がいます。メジナは海の中では、仲良く群れて泳いでいます。ところが、せまい水槽に一緒に入れたら、1匹を仲間はずれにして攻撃し始めたのです。怪我をしてかわいそうなので、そのさかなを別の水槽に入れました。すると残ったメジナは別の1匹をいじめ始めました。助け出しても、また次のいじめられっ子が出てきます。いじめっ子を水槽から出しても新たないじめっ子があらわれます。これは、動物すべてに共通する本能の一つだそうです。』
 でも人間は一般動物とは違います。人間には、理性というものがあります。理性を別な言葉で言いかえると、「ちゃんとした理由によって、物事を判断する能力のことです。」例えば、あなたにとっては、うっとおしくてなんとなく嫌いな人がいたとします。そんな時に「あの人は嫌い」という気持ちを自分の心の中だけに収めて、「他人の悪口は言わない」「他の人に同意を求めない」「SNSに書き込まない」ということをできるのが、人間ならではの「理性」です。それができなかったら他の動物と同じになってしまいます。皆さんにはそんな負の本能を打ち消すだけの、理性を身に付けてほしいと思います。そしていじめをなくすための、二つ目のキーワードは「想像力」です。
 次の文は、小学校6年生の時にいじめられていた子が書いた手紙の一部です。 

「いじめゲームをしている君へ」

  あのね。キモい死ねと連日ネットで言われるぼくが生まれた日、パパとママはうれしくて、命にかえても守りたいと思って、ぼくがかわいくて、すごく泣いたらしいですよ。この子に出会うために生きてきたんだって思えるくらい幸せだったんだって。それは、ぼくが生意気になった今でも変わらないそうですよ。想像してください。君があざ笑った子がはじめて立った日、はじめて歩いた日、はじめて笑った日、うれしくて泣いたり笑ったりした人たちの姿を。君がキモいウザいと思った人を、世界中の誰よりも、じぶんの命にかえても、愛している人たちのことを。そして、その人たちと同じように笑ったり泣いたりして君を育ててきた、君のお父さんやお母さんが、今の君を見てどう思うのか。それは、君のちっぽけな優越感と引き換えに失ってもいいものなのか。いま一度、考えてみてください。
 さて、皆さん。この、手紙を書いた子の気持ちや、家族の苦しみを「想像」できましたか。
  私は、皆さん一人ひとりが、人間だからこそもっている「理性」と「想像力」で、必ずいじめは無くせると信じていいます。6月は「いじめ撲滅月間」です。ぜひ、皆さんには、たくさんの本を読んだり、道徳の授業や様々な教科の学習を通して、心や頭に栄養剤を注入して、理性や想像力を磨いてほしいと思います。そうしてお互いに仲良く協力し合える、いじめのない温かな学校、クラス、部活動を一緒につくっていきましょう。よろしくお願いします。


 
 

・学校教育目標
「温かい学校 感動あふれる学校」

・目指す学校像
○時を守る ○場を浄める ○礼を尽くす

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